HOME > 平成時代の振り返り:持続可能性を考慮した新しい時代の企業戦略

平成時代の振り返り:持続可能性を考慮した新しい時代の企業戦略

(いつもより長文です)

平成時代も終わりを告げ、時代は令和へ変わりました。平成時代を通じて価値観の変化や様々な課題も生じ、持続可能性も問われつつある日本社会ですが、この幸せを今後も持続させていかなければいけません。そのためには企業はどのような考え方に基づいて新しい時代を進んでいかなければいけないのか、考えてみたいと思います。

①平成時代における価値観の変化

平成時代はIT技術等も向上したことにより昭和時代と比べて物質的に豊かになり生活水準も大きく向上しました。

この豊かさが今後持続してさらに発展していくのではないか、そのような期待感を多くの人が持っていたと思います。しかし、東北大震災によりそのような期待感が一変しました。このままでは日本社会は持続していかないのではないか、日本社会はどこかで間違ったんじゃないか、そのように多くの人が思うようになりました。

日本経済の牽引に大きく貢献してきた原子力発電所の安全神話も崩れ、それに伴い経済最優先の考え方も変化していきました。

平成時代を通じて気薄になってきた人と人との繋がりや、自然との共存等といった言葉が再度重視されるようになりました。

物質的な豊かさを求めてきた時代は終わり、本当に価値あるものを求める、また、社会において価値のあるものを購入する、そのような世の中へ時代は変化してきています。

働き方に関してもゆとりを重視する風潮も高まってきました。

前記のような価値観の変化に加え、人口減少や気候変動等の様々な課題も生じてきていますが、新しい時代において企業がどのように対応していけばいいか、考えていきたいと思います。

 

②労働者の意識変化(会社からライフへ)

平成初期の頃は会社を第一とする風潮が日本社会には大きくはびこっていました。大量生産大量消費を受け、どんどん働くことがよしとされてきた風潮です。それがワークライフバランス等の言葉もでてきて家庭を重視する気運も高まってきました。

「会社は正しく、会社のいうことはなんでも聞く」→「家庭や個人のライフスタイルを尊重」、それが平成時代の労働者意識における大きな変化と思われます。

年功序列による終身雇用を前提としていた企業も、個人の考え方にそって労働形態を変更していかなければ、今後は人口減少による人手不足を補うことはできません。

業務の効率化を図り、しっかりと休日を確保することは、次の時代における労働者雇用の必要条件となります。朝から晩まで働くという旧来型のシステムにおいては、働けなかった女性や高齢者、障がい者等を短時間雇用やテレワーク等をうまく活用することにより有効に雇用していくことも求められます。作業の標準化やマニュアル化等を促して、短時間でも働ける環境を整備することが必要です。

また、無駄なサービスが労働生産性の低下を招いている現状が日本社会にありますが、労働条件を考えることにより必用な製品・サービスが明確になり、労働生産性の向上とともに消費者が必要な製品・サービスが生き残っていくと思われます。

例えば、宅配便の細かい時間指定、利用者が少ない時間帯でのコンビニ営業等の雇用者の都合による過剰すぎるサービスについても、変化していくものと思われます。

消費者が必要としているサービスでしたら価格に転嫁することで存続するでしょうが、価格に転嫁できず労働者の負担によって成立しているようなサービスは今後は無くなっていくものと思われます。

 

③新しい時代のグローバルスタンダード

温暖化や多発するテロ等により、今のままでは世界は持続しない、世界の多くの人がそのことに気付き始めました。企業活動においても社会のことを考えるのがグローバルスタンダードとなっています。

最近ではSDGs(エスディージーズ) 、ESG投資、エシカル消費といった言葉も頻繁に耳にするようになりました。

「SDGs」とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2015年9月に国連で採択された国際社会共通の目標で、貧困問題からエネルギー問題まで全世界で解決すべき17の目標が設定されています。

「ESG投資」とは環境(environment)、社会(social)、企業統治(governance)に配慮している企業を重視・選別して行う投資のことです。

「エシカル消費」とは人と社会、地球環境、地域のことを考慮して作られたモノを購買することをいいます。

そして、企業の行う行動がSDGsに照らし合わせて適合しているか否かによって、ESG投資の観点から資金が調達されやすいか、また、エシカル消費の観点から購買されやすいかということに繋がっています。

プラスチックの大量使用により環境に悪影響を与えていたスターバックスが、プラスチック製のストローを使わないことを決めたことも、上記のような流れを受けたためです。一社のみの利益ではなく、社会全体の利益を考えなければ、スターバックスといえども生き残ってはいけないのです。

 

④社会性が重視される時代の企業の戦略

現在の日本の企業においては、SDGs等の社会性を考慮して企業活動が行われているかというと、そうでない部分が未だ多いです。

経済最優先のもと環境破壊に繋がるような素材を使用していたり、海外において劣悪な労働条件のもとで製造された部品を利用していたりと、企業活動においては旧来からのやり方が踏襲されている部分も大きいです。

現状においては、世界のスタンダードから大きく後れをとっていると言わざるをえない状態です。この状態を続ければ日本企業は他の国から取引されることのないような状態に陥ることでしょう。

また、震災以後の日本消費者の価値観との乖離も生じています。

日本においても今後は「エシカル消費」の観点から消費を行う消費者も増えていくと思われ、生み出している製品・サービスの社会性が問われてきます。

社会性が低い製品は購入しないし、世の中のことを考えない企業のことは見向きもされなくなるのです。ネット等の情報通信の技術が発達した世の中においては、環境破壊に繋がるような行動は世の中に一気に伝わり、企業ブランドの低下に繋がります。

企業においては社会のためになるにはどうすればいいかを分析、検討し、それを製品・サービスに反映させることが重要となります。

そして、どのように社会に役立っているかを消費者に分かりやすく説明することが必要です。つまり、環境負荷が少ない製品素材、適切な輸入経路、正当な労働環境等をメッセージとして消費者に届ける必要があるのです。社会において適正な行動をしているということを消費者に共感してもらえることが企業の差別化戦略となる時代なのです。

気候変動や貧困問題は普通に暮らしている私達全ての人類において、もはや人ごとではなくなってきています。これらの社会課題に向けて立ち向かっていく企業こそが次の時代において世間から承認され、そして永続的に存続していく企業といえることでしょう。

 

⑤明るい未来を期待して!!

平成時代は物質的にも恵まれ、今までの日本社会において一番豊かな時代であったと思われます。

しかしながら、気候変動や人口減少社会の到来等の影響で今後の世の中は今の社会システムを変更していかなければ持続することはできません。

平成時代というのは、経済成長を最優先し短期的利益を追求してきた日本社会が、社会的利益も考えた長期的利益を重視しはじめた転換期であったと思います。

そのような社会の変化を汲み取り、企業においても労働条件を見直すとともに、生産・サービスにおいて何が必要とされているかを社会の流れに即して分析し、消費者に提供していかなければならないでしょう。

誰もが笑顔で暮らせる持続可能な世の中を築くために、次の時代にマッチするように企業も成長していく必要があります。

明るい新時代になりますように!!

 

土地のあり方研究所 〜誠実・丁寧な島根の不動産鑑定事務所
島根県松江市大垣町1779番1 TEL&FAX.0852-88-2175
島根県知事登録(3)第19号(公社)日本不動産鑑定協会会員(公社)島根県不動産鑑定士協会会員